先日、リサイクルショップでカセットテープのノイズを低減させて音質を向上させる「アドレスユニット」という商品を入手しました。
この製品のことを書く前に・・・カセットテープのノイズリダクションについて書きたいと思います。
カセットテープを使ったことのある世代であれば「シャーーー」という耳障りなノイズ、これが非常に気になったことがあります。
カセットテープではこのヒスノイズと呼ばれる「シャーーー」というノイズがどうしても出てしまいます。これは高級なデッキやテープ使うことである程度軽減されますが気にならないレベルまで解消することはできません。
そこで登場したものが「ドルビーノイズリダクションシステム」です。
もっとも普及したノイズリダクションシステムでコンポ等のカセットデッキには必ずと言って良いほど搭載されていました。それ以外にも再生専用ではポータブル機(ウォークマン等)やカーオーディオにも搭載されました。
また高級ラジカセが流行った時期には一部の高級ラジカセにも搭載されていました。
こちらは録音時に高音域を持ち上げて録音し、再生時にはそれを元に戻して再生します。そのシンプルな仕組みもあり比較的廉価な機器にも搭載しやすく非常に扱いやすいこともあり幅広く普及しました。
また、基本的にノイズリダクションをかけたテープは同じノイズリダクションシステムを搭載したデッキで再生する必要がありますが、ドルビーノイズリダクションに関しては搭載させていないデッキでもトーンコントロールなどで高音を軽く下げてあげることで簡易的な再生をすることもできましたので、市販のミュージックテープでも幅広く採用されました。
しかし、ドルビーノイズリダクションは単純な構造であった分、ノイズの軽減量には限界がありました。そこで70年代~80年代初頭あたりには各社様々なノイズリダクションシステムを開発していました。
ドルビーの次に普及していたと言われるのはアメリカのdbx社が開発したdbxノイズリダクションシステムです。こちらは音を圧縮して録音するというシステムでノイズ低減量は-40dbを誇りダイナミックレンジはCDに匹敵するとも言われています。
ただ、圧縮が強い分ノイズブリージングという現象が強く、その辺は好みがわかれるところになります。
私はこのdbxノイズリダクション対応機器は数ヶ月という短い間ですが所有していたことがありますが・・・。ほんと素晴らしい音でした。
対応機器もそこそこ多く、テクニクス(現パナソニック)、A&D、ヤマハなどの高級機種で搭載機種が発売されていましたが、先に紹介したドルビーノイズリダクションシステムと比べると搭載機種はごく僅かでした。その他に通常のデッキに後付けで使用できる単体ユニットも発売されていました。
そして国産メーカーでも様々なノイズリダクションシステムが開発されてました。
その中でも比較的有名だと思われるのがビクターのANRSです。こちらはドルビーTypeBと互換製があり性能もほぼ同等でした。その後、ドルビーとは互換製のないSuperANRSも登場しましたがANRSと違ってドルビーとの互換製がなく、他のノイズリダクションシステムと比べて効果が低かったこともありほとんど普及しませんでした。
次に紹介するのは東芝のオーディオブランド「オーレックス」の開発した「アドレス」です。dbxノイズリダクションと似たような仕組みで音を圧縮して録音するシステムでしたが、dbxと比較して圧縮比は低めになっており、dbxと比べて音に与える悪影響が少なかったことが特徴です。ノイズ低減量に関しては-30dbを謳っており、他のノイズリダクションと比較するとdbxノイズリダクションに次ぐ性能を誇ります。
単体ユニットも発売されており、既存のデッキに後付けができ、私も最近このユニットを入手してTEAC製の比較的新しいデッキに繋いで使っています。
更に面白いのは東芝は当時「東芝EMI」というレコード会社を持っていたため、アドレスシステムを使って録音されたレコードも発売されていました。ただ、このレコードを再生するにはレコードプレーヤーにアドレスユニットを接続する必要があったため、再生できるシステムがかなり限定されるため発売されたタイトル数はかなり少なかったです。
その他にもサンヨーの「duper-D」日立とNHKが共同開発した「compander」、ナカミチの「HiCom-II」などがありました。このあたりは自分も使用したことがないですが、dbxやアドレスに近い仕組みだったようです。
その後、80年代中盤頃になるとこれらのノイズリダクションシステムを搭載した機器は全くと言っていいほど見かけなくなり、各社ドルビーノイズリダクション一本になってしまいました。
ドルビーノイズリダクションは更に性能を強化したTypeC、そして1990年には異なる技術で作られたTypeSと進化を続けました。TypeCに関しては単品コンポでは多く搭載されていましたが、TypeSに関してはDAT等のデジタル録音機器が登場した後だったためか、あまり搭載機器は多くはありませんでした。
(※90年代以降のカセットデッキに搭載されていたドルビーHX PROはノイズリダクションシステムではなく録音バイアス制御技術でした。多くの場合はドルビーTypeCノイズリダクションと併用されてました。)