今回購入したものはパイオニアのカセットデッキ T-WD5Rです。
こちらは1996年発売でパイオニアが本気で作ったカセットデッキではほぼ最後の機種といえます。
正確には翌年に発売されたこの機種に搭載したデジタル機構を使った3ヘッド機のT-D7という機種が最終モデルとなりますが・・・。
・カタログスペック紹介
こちらのデッキは外観はごく普通のWカセットデッキですが、デジタルプロセッサが搭載され、高音質な録音・再生ができることが売りになってます。
まず、最大の特徴は同社のCDプレーヤーやDATデッキなどに搭載されているレガート・リンク・コンバージョン機能が搭載されています。こちらはデジタル信号を処理して20Khz以上の高域を再現する機能で、20hz-40Khzの高域再生が実現されてます。
他にテープに含まれるヒスノイズをデジタル処理で除去するデジタルノイズリダクションを搭載しています。これによりドルビー無しのテープで82db、ドルビーBを使用したテープで90dbのSN比が確保されています。
更に高域が充分に出ていないテープを補正して音質を改善する機能、デジタルFLEX昨日も搭載されていますので、録音状態が悪いテープでもだいぶ聴きやすくなります。
録音機能に関しては自動調整機構のデジタルXD FLAT Systemを搭載しており、バイアス以外にテープの感度や高域のレベルなどを分析し調整してくれる機能も搭載してます。
・光デジタル入力端子搭載
CD等のデジタルメディアをデジタルのままカセットデッキに入力できる光デジタル入力端子が搭載されています。音質面で優位性があるかは疑問がありますが、デジタル入力を使用して録音時はソース側の再生状態に連動してテープが動作するので非常に便利です。
またデジタルXD FLAT System使用時は自動的に録音レベルを自動的に最適なレベルに設定されますので、録音レベルの設定は機械任せで大丈夫なようです。
【2018.9月 追記】
デジタル入力時は録音レベルは適正と思われるレベルより低めに録音されるようですので注意が必要です。
・再生能力の比較
では実際に再生してみるとどうでしょうか?特性を確認するために一般的なカセットデッキでホワイトノイズを録音されたテープを再生させてみました。
まず、一般的なデッキで再生したときの特性です。
次に今回紹介するT-WD5Rの特性です。
このグラフから高域がしっかり補正されて綺麗な特性で出ていることが確認できます。
・録音能力の比較
次に録音性能の確認です。今回のデッキでデジタルXD FLAT Systemを使用したときの録音状態も確認します。今回はホワイトノイズをこのデッキと一般的なカセットデッキで録音して再生してみます。再生は補正による効果が出ることを避けるため一般的なカセットデッキで再生してみます。
一般的なカセットデッキで録音したテープです。高域がなだらかに減衰していることがわかります。
次に今回のデッキでデジタル補正を使用して録音したテープです。
高域が限界近くまでフラットな特性を維持してることがわかります。自己録再だけではなく、他のデッキでの再生時でも良好な特性を維持されていることには驚かされます。
そして、特性は計測しておりませんが、デジタルXD FLAT Systemを使用して品質に低いテープで録音してみるとそれなりの音質に補正して録音してくれます。
90年前後によく売られていた史上最低のカセットテープとの噂もあるBONカセットテープや、1970年代前半に発売された古いカセットテープでもしっかり補正できています。
マニュアルでは品質の低いテープや古いテープだとERR表示になり補正できないことがあると記載されていますが、手持ちのテープで特に品質の低そうなもので試してみましたがしっかり補正できてしまいました。
・試聴をしてみると・・・
ここまで数値で比較してみましたが、実際に音楽を試聴してみるとクリアで他のデッキと比べて高域が気持ちよく出ていることがはっきりわかりました。デジタル処理を行っているためアナログっぽさは損なわれているような気もしますが、素直な気持ちいい音で楽しめるカセットデッキです。
また、20年以上前に当時の低価格ラジカセで録音した録音状態の極端に悪いテープも再生してみましたが、こちらも高音質とはいきませんが、聴きやすい音質に補正してくれました。
また、正確に計測してませんが、無音部のノイズレベルはCDプレーヤーのアナログ出力と比べてやや大きい程度でCDに匹敵するSN比という謳い文句も伊達ではないようです。
・外観や操作性
まず、最初に感じたのが軽いというところですね(笑)この時期のオーディオ製品は軽いものが多いんですよね。こんなので本当にいい音が出るのか疑問が出るほどです。
そして横幅が420mmと若干小さめ。他のオーディオ機器と比べるとやや小さめになっており、縦も125mmと非常に小さいです。
他の外観の特徴的な部分は録音時に使用するボタン類をフリップ型のカバーで隠せるようになっているので、外観は非常にシンプルで高級感があるものになっています。
操作性は再生に関するボタンは非常に大きめになっており、非常に使いやすくなっています。録音に関しては基本的に調整はオートで行うことが前提になっていますので、バイアスのマニュアル調整はできないようです。
そして、驚いたのがイジェクトボタン。中級機では珍しい完全な電動タイプのものになっています。電子制御になってますので、再生中にイジェクトボタンを押すと自動的に停止して扉が開くのは意外と便利なものです。
・ちょっと気になるところも・・・
このデッキで非常に気になる点はレベルメーターです。特に録音時、カセットテープの能力を引き出すためには録音レベルの調整が肝になりますが、レベルメーターが最大+3dbまでしか表示がありません。録音レベルの大きめなテープを再生するとメーターが完全に振り切ってしまいます。また、±0db以上の表示自体が±0db、+3dbの2段階しかありませんので、非常に不便です。
また、中級クラス以上のカセットデッキの場合、ヘッドのメンテナンスを行いやすいようにカセット部のフタを取り外せるようになってるものがほとんどですが、何故か取り外せません。妙なところでコストダウンを計ってるようですねぇ(笑)
サブ機としてオートリバースでそころこ音質の良いものを探していたところ良いものが見つかって満足してます。年式も比較的新しいので・・・長く持ってくれるといいのですが(笑)